気圧の変化と自律神経 〜栄養士のColumn Vol.43
「古傷が痛むと雨が降る」といういい伝えもあり、天気が痛みに大きな影響を与えることはよく知られていますよね。
その他にも、なんだか頭痛があるなぁと思ったら、雨が降ってきたり、台風の時はだるさを感じたり・・梅雨に入ると、じめじめした気候で気分は落ち込みがちだなぁという方もいらっしゃると思います。
最近の研究では、実際に気圧の変化や気温の寒暖差は、痛みをはじめさまざまな不調を引き起こすことが判明しているそうです。
今回はそんな天気と体の関係について、お話をしていきます。
気圧、温度、湿度など気象の変化があるときに起こる身体の不調は「気象病」と言われています。
雨の日は「気持ちが上がらない」、「なんだか体が重い」など、感覚的なものもありますが、「気象病」とは気象の影響を受ける病気や症状の総称で、痛み、めまい、耳鳴り、劵怠感、狭心症、低血圧、ぜんそく、うつ病などさまざまなものが存在します。
思い当たるという方も多いこの「気象病」は、まだはっきりわかっていないことも多いと言われています。
そのメカニズムは完全に解明されていませんが、発症には大気の気圧が大きく関係していると考えられています。
梅雨や台風、豪雨などの悪天候になる原因は低気圧です。
低気圧によって気圧が大きく変化することで、体で気圧を感じるセンサーである耳の奥にある「内耳」という部分から脳に信号を送り、自律神経が活性化し、気圧に敏感な方は自律神経を乱すことにつながっていると考えられています。
内蔵の動きなどをコントロールしている自律神経には、交感神経と副交感神経があり意識して動かすことはできません。
交感神経は昼間の活動時に優位になり、緊張したり興奮したりしたときに、汗を出したり心臓の鼓動を早めたりします。
副交感神経は、リラックスしているときに優位になり、夜間や寝ているときに内蔵の動きを高めたりメンテナンスを行ったりしています。
参考: 自律神経のはなし 〜栄養士のColumn Vol.36
気圧の変化に大きく影響するのは交感神経です。
気圧の変化で活性化した交感神経は、痛みの神経を直接刺激したり、血管を過剰に拡張・収縮させて周りの神経を刺激したりしてしまい、さまざまな症状を発生させてしまいます。
もちろん、気圧のほかにも、湿度や温度の変化が自律神経に影響し、体や心の不調として現れることもあります。
このような気象病とも言われている不調を軽減させるためにも、ライフスタイルの中で取り入れやすい方法として、自律神経を整える生活を送ることです。
■食事で「気象病」に備える
雨や台風は自然の摂理。
避けることができないことだからこそ、備えることが重要です。
そのために出来ることを紹介していきます。
a. 腸内環境を整える
自律神経と腸は密接な関係にあります。
まず腸内環境を整えることがポイント。
自律神経が乱れると、腸に影響して腸内環境を悪化させてしまいますが、腸内環境を整える食生活を心がければ、有害物質を血液に送り込む悪玉菌の働きを抑え、自律神経のバランスを整えることに直結しています。
腸には、食べたものを消化吸収して、不要なものは排泄するという役割があります。
自律神経の交感神経が優位な時は腸のぜんどう運動は停滞し、副交感神経が優位な時は活発になります。
腸のぜんどう運動がしっかり起こっていると腸内の不要な物が次々と押し出され、腸内環境にも好影響をもたらします。
このように、自律神経と腸はとっても関係性が深いのです。
そのためにも、まずは腸内環境を整えることをします。
ポイント1:乳酸菌を積極的に
腸内での善玉菌の割合を多く保つことがポイントです。善玉菌の代表と言えば「乳酸菌」ですね。
ヨーグルトやぬか漬け、キムチなどの発酵食品にも含まれます。
ポイント2:食物繊維は必ず摂取
食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類あります。
海藻類や果物、オクラなどの野菜に含まれる水溶性食物繊維は、水分を含みやすいので、便を軟らかくする働きがあります。
ごぼうやさつまいもなど繊維質が多い野菜に含まれる不溶性食物繊維は、腸の中で水分を含んで便の量を増やし、腸を刺激して蠕動運動を活発にする働きがあります。この2つの食物繊維をバランスよく摂ることがポイントです。
b. 自律神経を整える栄養素を摂取する
栄養素1: たんぱく質
たんぱく質の構成成分である必須アミノ酸の一部は、脳内の神経伝達物質の生成に必要です。
「チロシン」は、自律神経を刺激するノルアドレナリンとアドレナリン、快感をもたらすドーパミンを作ります。
また、精神を安定させる作用があるセロトニンは、「トリプトファン」から生成されます。
必須アミノ酸は体内で合成できないため、肉類や魚介類、大豆類など、たんぱく質が豊富な食材をしっかり摂ることが大切です。
忙しい方は、プロテインの摂取がおススメ。
GRØNのプロテインはスーパーフード配合なのでビタミンやミネラルも一緒に摂取することができます。
栄養素2: ビタミンB6
精神を安定させる作用があるセロトニンはトリプトファンから生成されるときに必要なビタミンB6。
肉類、カツオ、マグロ、バナナ、納豆、野菜類に含まれています。
栄養素3: ビタミンB1
血行をよくし、疲労物質の排泄を促します。
また、神経系にも働きかけて情緒を安定させる働きもあります。
豚肉、うなぎ、玄米などに含まれます。
アリシンを多く含むタマネギや長ネギと一緒に食べることで、吸収力がアップします。
栄養素4: ビタミンB12
自律神経を安定させる効果があります。
しじみや赤貝などの貝類や、牛や鶏のレバーなどに含まれます。
栄養素(その他): そのほか
自律神経を整えるミネラルの亜鉛(牡蠣、あわび、たらばがに、するめ、豚レバー)やマグネシウム(油揚げ、豆腐、きなこ等)、鉄分(レバー、プルーン、ホウレンソウ等)も意識して摂取することがおススメです。
c. 食事で自律神経を整える
・3食決まった時間に食事を取りましょう。1日の自律神経のリズムを整える助けとなります。
・消化吸収の良い食事を心がけ、食べ過ぎず腹八分目に、胃腸に負担をかけないようにしましょう。
・野菜やお肉から食べる。
<ここは解説を>
糖質や甘いものを空腹時に食べると血糖値が急激に上がるとそれを下げるために膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌します。
急な血糖値に対して下げようとするため、「ノルアドレナリン」「ドーパミン」などのホルモンが出ます。
これらは交感神経を優位にする働きがあるため、副交感神経とのバランスが崩れる原因にもなります。
そのために、血糖値を急激に上昇させない肉や卵など、タンパク質・脂質が豊富な食べ物から食べましょう。
ご飯、パンなど糖質の高いものはその後に食べることで血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
d. 運動をして自律神経を整える
運動の習慣化・特に夕方以降がオススメです。
適度な運動やストレッチなどにより身体を動かして身体の血液循環をよくすることや、日ごろからの体力をつけることなどが重要と言われています。
特に夕方以降の軽い運動は、心のバランスを整える作用のある神経伝達物質のセロトニンを分泌し、よい眠りにつながると言われています。
運動が苦手という方も、「腹式呼吸」だけでも取り入れてみてください。
吸う息でお腹を膨らませ、吐く息でお腹をへこませる呼吸法です。
腹式呼吸は自律神経を刺激し、副交感神経をオンにしてくれるので、心身をリラックスさせる効果があると言われています。
寝る前に自分のペースに合わせて行うことがおすすめです。
e. 質の良い睡眠で自律神経を整える
質の良い睡眠を取ることは、心の健康を保つためにとても重要なことです。
・毎朝決まった時間に起き、カーテンを開けて、日光を浴びる。
・寝る前は、コーヒー・紅茶などのカフェインやお酒の摂取は避け、室温・寝具など、眠りやすい環境を整えて眠りの準備を。
・ぬるめのお湯にゆったり入浴してリラックスを。
参考: 睡眠と免疫について 〜栄養士のColumn Vol.18 (前編)
参考: 睡眠の質を上げるための食事について 〜栄養士のColumn Vol.18 (後編)
天気の変化に起こる体や心の不調。
自律神経を整えることで、気象の変化に負けない体づくりをしてみてはいかがでしょうか。
タンパク質やビタミンが不足している方に、植物性の国産プロテインGRØNの商品のお買い物はこちらから。
——————————————————
栄養士・食育指導士・食の6次産業化プロデューサーlevel4
石原綾子
ヘルスケア分野での栄養指導、アグリビジネスのプロフェッショナル。
ミスワールド日本候補生に向けた講演会など、美や健康に特化した分野をフィールドに様々な活動を行なっている。
「食を通して心と身体を豊かにし、人と地域がつながる生き生きとした社会を実現する」を理念に掲げ2013年に、株式会社アイ・フィールドを設立、代表を務める。
各地域で野外レストランを開催する「DINING OUT」の食材TEAMや、ファッションブランドのプロジェクトに中心メンバーとして参画。
また、地域食材のPR、「健康」や「美容」に特化した商品開発プロデュース、ブランディング、コンセプト設計、食品衛生、販売促進プロモーション、研修企画運営等に携わっている。GRØNの商品開発では栄養面での監修を担当。消費者の健康に、より効果的に取り入れる方法を提案している。
——————————————————