東洋医学について (漢方編) 〜栄養士のColumn Vol.53
寒さが強まる今日この頃。
冬は身体が冷えやすく、空気が乾燥するため、自然免疫である鼻やのどの粘膜も乾燥して、風邪や感染症が毎年流行します。
そんな中で、病気に負けない身体と心を作る「漢方」などの東洋医学が注目を集めています。
東洋医学とは
東洋医学とは、東洋で数千年以上前から伝統的な治療法として発達した歴史を持ちます。
西洋医学が病気や怪我の治療を目的にしているのに対し、東洋医学では、病気や不調な症状を「からだ全体」としてとらえ、原因が何であるのか突き止め、その原因を除去することを目的にしています。
東洋医学では、患部だけではなく全身を診てから治療法を判断します。
治療には、生薬や漢方、鍼や灸などを用います。
東洋医学での健康な状態は、「気」「血」「水」と呼ばれる3つの要素がバランスを保ち、正常に体内をめぐっている状態をさします。
3つの要素、「気」「血」「水」
大切な3つの要素、「気」「血」「水」は以下を指します。
「気」・・・生命活動を行うために必要なエネルギー
「血」・・・・血液
「水」・・・体液や分泌液
身体の不調は、この3つのバランスが崩れているためと考えられており、肝・心・脾・肺・腎の五臓の働きを整えることが回復に重要と考えられています。
漢方について
世界の東洋医学は様々な伝統医学があり、人々の健康を支えてきた歴史を持ちます。
その中でも中国医学(中医学)、アーユルヴェーダ(インド古典医学)、ユナニ医学(アラブ・イスラムの医学)が三大伝統医学と呼ばれています。
この中の、中薬(漢方)、薬膳、推拿、気功、太極拳など幅広い領域に渡る中国医学が日本に渡り、日本独自の処方として「漢方」が生まれました。
「漢方」とは鍼灸や食養生も含めた医学を意味していて、「漢方薬」は、原則として2種類以上の生薬を、漢方医学の理論に基づいて決められた分量で組み合わせたもの指します。
原材料は、植物の花や果実、種、根、茎、樹皮、葉(草木によって用いる部分が異なる)、菌類、鉱物や昆虫などの由来で様々。
生薬は200種類以上、薬効のある上記の植物や動物、鉱物などを組み合わせて作られています。
一部ではありますが、主な生薬を以下にして紹介します。
主な生薬
桃仁・・・
桃の種の核を取り出して、日干ししたもの。
血流を改善したり、月経の調子を整えたりする効果があり、特に女性の不調に効果を発揮するとされています。
葛根・・・
葛の根で、葛は古くから食品や生薬として利用されてきた日本の伝統的な植物。
葛にはイソフラボンやサポニンが豊富に含まれており、更年期障害の予防・改善や血流改善などに効果があるといわれています。
大棗・・・
ナツメの成熟した果実を乾燥させたもの。
カリウムなどのミネラル類、葉酸などのビタミンB群、食物繊維、サポニンなどが豊富に含まれており、体を温める効果や滋養強壮、高血圧予防など多岐にわたる効果が期待されています。
芍薬・・・
牡丹の花によく似た植物。
古くから婦人病の生薬として用いられています。血流を改善し、肩こりをやわらげる効果に期待できます。
当帰・・・
根を薬用としています。
手足の冷えや、貧血、月経の正常化など数多くの症状に働きかけ、婦人科の漢方薬にも幅広く配合されています。
陳皮・・・
ミカンの外皮を陰干しして乾燥させたもの。
風邪の症状改善や冷え性改善、胃腸の調整、リラックス効果などに期待ができます。
生薬の宝庫・奈良
このように、さまざまな生薬がある中で、日本最古の朝廷がおかれた奈良県は、古来から生薬と深い関わりをもっています。
「大和誌」によると、宇陀、高市、宇智、吉野など南大和の諸郡で、地黄、当帰、人参、大黄などを産出すると記されています。
優れた産地である奈良県で今注目を集めている生薬が、「大和当帰」です。
この当帰は品質が非常に高く、栽培に手間がかかるため、奈良、和歌山両県境にわずかに栽培されているだけでしたが、現在、栽培拡大に向け取り組まれています。
当帰は主に根を利用していますが、葉の方にも、ビタミンやミネラルなど栄養成分が豊富に含まれていることが分かり、美容や健康に有効なビタミンEが特に豊富に含まれているそうです。
葉は、抹茶やセロリのような甘みの香りの特徴を持ち、サラダや天ぷら、ドレッシングなどで幅広く活用されています。
調子が悪いところだけではなく、からだ全体に効能を発揮してバランスを整え、元気なからだを作りあげてくれる漢方薬。
身体を整えるためにと、昔から薬草や生薬などの植物の力を有効活用して人々の健康を支えてきました。
なんとなくの不調や、ストレスで気分が上がらないなど、忙しい毎日を送る現代人の私達は、様々な体や心の悩みを抱えます。
それらを問題を解決する糸口が、漢方薬にあるかもしれません。
飲みずらいという方にはブレンド茶などもあるので、漢方薬を処方してくれる機関などでカウンセリングを受け、自分に合った漢方薬を試してみてはいかがでしょうか?
——————————————————
栄養士・食育指導士・食の6次産業化プロデューサーlevel4
石原綾子
ヘルスケア分野での栄養指導、アグリビジネスのプロフェッショナル。
ミスワールド日本候補生に向けた講演会など、美や健康に特化した分野をフィールドに様々な活動を行なっている。
「食を通して心と身体を豊かにし、人と地域がつながる生き生きとした社会を実現する」を理念に掲げ2013年に、株式会社アイ・フィールドを設立、代表を務める。
各地域で野外レストランを開催する「DINING OUT」の食材TEAMや、ファッションブランドのプロジェクトに中心メンバーとして参画。
また、地域食材のPR、「健康」や「美容」に特化した商品開発プロデュース、ブランディング、コンセプト設計、食品衛生、販売促進プロモーション、研修企画運営等に携わっている。GRØNの商品開発では栄養面での監修を担当。消費者の健康に、より効果的に取り入れる方法を提案している。
——————————————————