沖縄の「ぬちぐすい」生まれ育った土地の文化を再発見する。Vol.1 「ハッピーモア市場」 in 宜野湾市
沖縄の「ぬちぐすい」生まれ育った土地の文化を再発見する。Vol.1 「ハッピーモア市場」 in 宜野湾市
「命薬(ぬちぐすい)」
沖縄の方言で、若いわたしでも、時たま耳にする言葉です。
おいしいお料理、体にいい野菜、そういったものに対して、この言葉を使います。これを食べたら、元気が出る、エネルギーが湧く気がする。そんなニュアンスで。
沖縄に眠る「ぬちぐすい」を求めて、各所をまわるこの連載が始まったきっかけは、GRØNのプロテインに沖縄の野菜が使われていること。
ハッピーモア市場に行ってみてくれないかと、GRØN代表の福島さんにそう言われたのは、数ヶ月前のことでした。飲食店や自家農園を持っている方と話すと、こぞって口にされるその名前。
「ハッピーモア市場で野菜を買ってるよ」
「ハッピーモア市場に野菜をおろしているよ」
一体、どんな場所なのか。期待を胸に、辿りついた先にあったのは、大きな大きなビニールハウスでした。
この日は、社長の多和田さんにお話を伺えることに。
もともと、お野菜や農家に興味はあったんですか?と聞くと、いや、全然。親父が持っていたビニールハウス(現在のハッピーモア市場)が大きかったから、野菜を作らなくなった代わりに、ここで直売所を始めてみることにしたんだよ。そしたら、難しいのなんのって。
そんなひょんなきっかけで始めた市場も、今や大人気です。ただ、市場を開いてからは、苦労の連続で、始めてから4年間ほどは、お店を続けるだけでやっと、という状態だったそうです。
一度目の転機は、野菜の仕入れ先を変えたこと。
大手からではなく、家庭で野菜を栽培している、一般の方々から、野菜を仕入れ始めたのです。沖縄には「好きで」野菜を育てている方がたくさんいます。しかし、その量が多くなると、たびたび近所に配っても、量が多すぎると、迷惑に思われてしまうことも。自分で育てた野菜を持て余している人々に、声をかけたのです。これが奏功しました。
「みなさん、すごく喜んでくれますよ。うちにこれば、今まで持て余していた野菜を、喜んで買ってくれるお客さんがいますから。買ってくれた人たちのリアルな声が、農家さんに届くんです」
二度目の転機は、独自制度の導入です。
多和田さんいわく、これがハッピーモア史上、もっともやってよかったお店の「工夫」だそう。
仕入れた野菜や果物には、バーコード部分につけたシールの色で、育て方が判別できるようになっています。
「自然の状態で育った、薬効が高いもの」
「農薬と化学肥料を使っていないもの」
「農薬は使っていないもの」
「少しだけ農薬を使っているもの」
と分けています。
「ほとんどの会社では、こういった区分けは、リスクを恐れて行っていない。うちは、農家さんの自己申告です。嘘をつかれたら、もう仕入れをしません、という契約にはなっていますが、農家さんを信頼して、こういった仕組みにしています」
意外にも、農薬を使っているかどうか、で売り上げに差はでないのだと言います。
「お客さんには、納得して買ってもらうことが大事なんです。おおきな売り場では、農薬も化学肥料も、手間をかけていてもいなくても、野菜が同じならみんな同じ並びと価格になってしまします。たとえ農薬を必要な分だけ使っていても、大事においしく育てている。そういうことを理解したうえで、みなさん買ってくださっているのだと思います」
シールがあるだけで、農家さんは、自分の野菜の育て方を消費者に伝えることができる。もっといえば、こだわりを。自信を。消費者は、より細やかな選択ができるようになります。
現在、ハッピーモア市場は、地元の食に携わるの人々から絶大な信頼と認知度を保っています。
仕入れ先の農家さんとのコミュニケーションにも、私は感心しきりでした。おじいやおばあが多い中、地域との繋がりを持てる場があること。趣味で取り組んでいた自家菜園を仕事にすることは、きっと「生きがい」にもなっているはず。
どうしてこんなことを考えたかといえば、ハッピーモアを訪れるように言ってくれた、GRØNの福島さんから、この連載を機で与えられたテーマが、「ブルーゾーン」だったからです。
長寿の人々が生きる地域として、世界中から選ばれた数少ない地域のひとつが沖縄。今や健康長寿の県ではなくなりつつありますが、ブルーゾーンの地域に共通して見られるという「地域間のコミュニケーションの強さ」が、このハッピーモア市場があることで保たれている気がしました。
次回は、ハッピーモアの多和田さんに教えていただいた、沖縄の薬草について、書いていきます。
<店舗情報>
ハッピーモア市場
〒901-2213 沖縄県宜野湾市志真志1-247-1
10:00 〜 18:00 日曜定休日
TEL:098-896-0657
Website: https://happymore.jp
Photos & Scripts by Mizuki Kadekawa