COLUMN / RECIPE

12 / 25 / 2022

野菜の栄養を効率よく摂取するためのポイント〜栄養士のColumn Vol.79

現在、日本ではさまざまな野菜が栽培され、農林水産省の統計で把握しているものだけでも約90品目にのぼるそうです。
ビタミンやミネラル、そしてフィトケミカルを豊富に含む野菜。
しかし、厚生労働省の令和元年(2019)「国民健康・栄養調査」によると、野菜摂取量の平均値は280.5g。
野菜は1日350gの摂取が推奨されていますので、あと約70g足りていません。
年齢別にみると、男女ともに20~40歳代で少なく、60歳以上で多い傾向にあります。

野菜から摂取できる栄養素の量は調理方法によっても変わりますが、今回は少し視点を変えて、野菜の栄養を効率よく摂るための4つのポイントについてお話していきます。

ポイント1:野菜の旬を把握する

昔なら、野菜などの作物は「旬」の時期にしか出回らなかったので、店頭に並ぶ食材を見れば、旬を知ることができました。
しかし近年では、露地やハウス、水耕と、栽培技術の向上や流通システムも整い、全国どこでも様々な種類の野菜を1年中購入することが可能となりました。
その一方で、旬の時期が分かりにくくなったのも事実です。

旬=出盛り期は、野菜が最も美味しく栄養価が高い時期

「旬」とはある特定の食材において、ほかの時期よりも新鮮でおいしく食べられる時期のことです。
旬の物は市場によく出回るため、価格も安く「出盛り期」とも呼びます。

また、旬の食材は美味しいだけでなく、栄養成分が豊富です。

旬のものを食べることと、体のこと 〜栄養士のColumn Vol.49

例えば、今の季節である冬に旬を迎える野菜は、白菜、ほうれん草、大根など。
これらの特徴として、寒さで凍ることがないよう、細胞に栄養分や糖を蓄積するため、栄養価や糖度の高い野菜が多くなります。

特に、ほうれん草は、寒い気候を好む作物です。
高温な気候だと生育が悪く、夏は栽培しにくいのが特徴でしたが、近年では、暑さに順応した品種が生まれ、栽培技術も進み、周年栽培されるようになりました。
しかし、夏と冬に収穫されたほうれん草のビタミンC含有量を比較してみると、冬採れのほうれん草は、ビタミンCの含有量が3倍以上である研究結果もあります。

このように同じ野菜でも、旬の時期に食べるだけで摂れる栄養素に大きな違いがあります。

また産地によっても品質(硬い・やわらかい・あまいなど)や時期が異なるので、八百屋さんで話を聞いたり、ネットで情報を収集すると良いでしょう。

ポイント2:新鮮な野菜を選ぶ

野菜の栄養をきちんと摂取するためには、新鮮なものを選ぶこともポイントです。
鮮度が落ちた野菜は、味が悪くなってしまうだけではなく、栄養素も減少してしまいます。

鮮度が落ちる理由として、収穫されたあとの野菜は呼吸をしており、時間が経つにつれ糖分やビタミンCなどの栄養分を分解し、水分もどんどん蒸発していきます。
また、特に果物に多いエチレンという植物にあるホルモンが出て、呼吸を促進し、植物の劣化を早める働きがあります。

新鮮なうちに消費するのが難しい場合は、冷凍保存するのもおすすめです。
冷凍そのもので栄養価が損なわれることは少ないのですが、冷凍や下処理をしても栄養価の損失が少ない食材を選んだり、なるべく新鮮なうちに冷凍保存するとよいでしょう。

*冷凍に向かない野菜
レタスやきゅうりなど水分量が多い野菜、じゃがいも(茹でてマッシュなどの下処理をして冷凍は可)など

ポイント3:手間がかかっても自分で調理する

忙しい時やランチで手軽に野菜不足を解消しようと、カット野菜やコンビニサラダ等を選ぶ方は多いと思います。

野菜を切ったり洗ったりする手間が省けるので便利ですが、市販のカット野菜は、製造過程で何度も殺菌洗浄するので、水溶性ビタミンが2~4割ほど流出してしまいます。

自宅でも野菜を洗う際に、ある程度ビタミンが流出しますが、市販のカット野菜やサラダは、より多くの栄養素が失われてしまっている可能性があります。

また、コンビニ等で販売されている野菜サラダは、そのほとんどが合成着色料・保存料不使用と表記していますが、実は野菜の切り口が変色しないための防止剤や野菜のシャキシャキ感を出すための添加物を使用しているものがあります。
これらの添加物は、ラベルに表示しなくても良いルールになっているので、私たちにはわからなケースがほとんどです。

国内で製造される商品に使用される添加物は、どれも安全基準をクリアしており危険ではないとされていますが、なるべく添加物を摂取したくない方は、少し手間がかかっても自分でカットをして作るのが安心で栄養も摂ることができます。

ポイント4:野菜の栽培方法にも注目する

野菜を選ぶときに、どのような環境で育てられたか、意識してみるのも良いでしょう。

栽培方法によって野菜の栄養価が大きく変わるかといえば、一概にそうとは言えないようです。
有機栽培が若干ポジティブな結果が出ているものの、育てる種類や土地の条件によって品質が異なるといえます。

それでも、現在国内の農家の半数以上が、農薬や化学肥料を使用した慣行栽培を行っていることを私たちは知っておく必要があります。
慣行栽培で用いられる農薬・肥料は、安全性や基準が定められているとはいえ、健康面への懸念が拭いきれないのが現状です。

*一般的に広く周知されている代表的な栽培方法

慣行栽培▼
化学合成農薬や化学肥料、化学合成土壌改良剤などを必要に応じて利用する一般的な栽培方法。

特別栽培▼
農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に従って生産された、化学合成農薬および化学肥料の窒素成分を慣行レベルの5割以下まで削減して生産します。

有機栽培▼
化学肥料や農薬を使用しないこと、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減する農業生産。
日本では有機JAS規格があり、JAS規格に適合した農産物でなければ、いくら化学肥料や農薬を使用せずに栽培しても「有機」や「オーガニック」などの表示はできません。

また最近では、一切の肥料や農薬を使用せず、土本来が持っている植物を育む力を重視・尊重した「自然栽培」をする農家さんもいます。

自然栽培の目的は、生命力を生かし、より豊かにしようとする自然の働きを引き出し、永続的な生産を行うことです。
食品の安全性を求める声が高まってきている昨今、環境保全型農業への転換が良いとされ広く社会で認識されるようになり注目され始めています。

野菜に含まれるミネラルやビタミンなどの栄養価は、50年前よりもだいぶ減っているとされています。
昔とは分析方法が異なったり、品種改良がされたりと一概には言えませんが、要因の一つとして地力の低下と言われています。

野菜が土壌からミネラルを吸収するには、良質な堆肥を活用し、多様な微生物が増える土壌が良いとされています。
その理由は、野菜は自分の力だけでは土壌のミネラルを吸収できず、土壌菌との共生関係によって、ようやくそれらを吸収できるようになるからだそうです。

*農作物を栽培する肥料

有機肥料▼
植物由来もしくは動物由来の原料から作られる肥料。
微生物が分解し、植物が吸収できる栄養に変わり、土壌菌は多様なミネラルやビタミン類を生み出します。

化学肥料▼
化石燃料や鉱物資源を化学的に合成してつくられた肥料。
水に溶けやすく短期間で野菜に栄養を与えるので収穫量が多くなります。ただ、土壌を改善するということはできません。

効率よく野菜の栄養素をとるには、調理をする前の段階、野菜を選ぶ目利きが必要になります。
スーパーでもパッケージに農家さんの名前や顔写真が印字されていて、どういう方が作っている野菜かがわかる機会が増えました。
ネットで積極的に旬のものや生産者の情報を入手したり、信頼のおける農家さんから直接野菜を買ったりできる時代です。
なるべく新鮮なものを購入して、野菜のパワーを存分に頂きましょう。

 

GRØNでは、生産者の方に直接お会いしてお話を伺ったり、作物が育つ過程を確認してから原材料を調達しています。

GRØNの購入はこちらから

——————————————————
栄養士・食育指導士・食の6次産業化プロデューサーlevel4
石原綾子

ヘルスケア分野での栄養指導、アグリビジネスのプロフェッショナル。
ミスワールド日本候補生に向けた講演会など、美や健康に特化した分野をフィールドに様々な活動を行なっている。

「食を通して心と身体を豊かにし、人と地域がつながる生き生きとした社会を実現する」を理念に掲げ2013年に、株式会社アイ・フィールドを設立、代表を務める。
各地域で野外レストランを開催する「DINING OUT」の食材TEAMや、ファッションブランドのプロジェクトに中心メンバーとして参画。
また、地域食材のPR、「健康」や「美容」に特化した商品開発プロデュース、ブランディング、コンセプト設計、食品衛生、販売促進プロモーション、研修企画運営等に携わっている。GRØNの商品開発では栄養面での監修を担当。消費者の健康に、より効果的に取り入れる方法を提案している。

——————————————————