COLUMN / RECIPE

11 / 19 / 2021

精進料理について 〜栄養士のColumn Vol.51

食生活からヘルスケアをすることが世の中のスタンダードとなっている今、世界的に精進料理が注目されています。
海外では、「Buddhist Cuisine」として紹介されています。
単なる野菜料理ではなく仏教の歴史とともに発展してきた精進料理について今回は紹介したいと思います。

精進料理とは

精進料理とは、禅宗系の僧侶が伝えた料理法、もしくはその体系をさすもの。
不殺生戒に基づき鳥獣魚介の類を使用せず、禅僧が修行の一環として作る料理として発達したとされています。

「精進」という言葉は、仏道修行に励むことを指す仏教用語ですが、「精進料理」は、実は仏教の経典には登場していないそうです。
動物性食材や匂いの強い食材を食べないといった僧侶特有の食事を、民衆が仏事にまつわる料理として受け取り、「精進料理」と呼ばれてきたそうです。

仏教がインドから他国に伝来する中で、中国では人里から隔離された山奥に禅寺が作られ、完全な自給自足の中で殺生忌避の戒律に従い植物性食品のみの精進料理が発達しました。
限られた農作物をもとに食事を作る中で「煮る・炒める・揚げる・煎る・干す」などのさまざまな調理法を駆使し、食べる相手のことを思い、丁寧に食事を整えることそのものが修行のひとつとされていました。

日本では中国経由で仏教が伝来する中で、精進料理は動物性食品を使わず植物性食品のみで作るという形式中心で理解された面があります。しかし本来は、食べ手を思いやり、手間をかけて作る「もてなしの心」、食べる側にはその気持ちを受け取り「感謝する心」が必要であるとされています。

精進料理の定義・特徴について

鎌倉時代に禅宗の寺院の食事法として確立された精進料理の定義は、殺生を禁ずる戒律を守り、魚介類や肉類を用いず、野菜類、穀類、豆類、海藻類などの植物性食品で構成される食事であること。
本膳や会席料理形式が多く、一汁三菜や二汁五菜などで用いられ、精進だしを用いた薄味仕立てが基本となります。
*宗派によっては、ネギ類の野菜(ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなど)である五葷(五辛)やお酒も利用しないこともあります。

曹洞宗の開祖・道元禅師が作り手の作法としての「*1) 典座教訓」の中で唱えた「*2)三徳*3)六味」が精進料理の基本となっています。

*1) 典座教訓について
・・・禅の修行道場における食を司る典座の職責の重要さが記されとおり、五法(煮る・焼く・蒸す・揚げる・生)、五色(白・黄・緑・赤・黒)、六味(甘い・辛い・酸っぱい・しょっぱい・苦い・淡い)を組み合わせること、旬の食材を余すことなく使って調理すること、調理をする心構え、調理前から調理後の在り方、食中の作法などが、細かく定められています。

*2) 三徳について
・・・軽柔、浄潔、如法。3つの視点から徳を解いています。
・軽柔(軽く柔らかい、口当たりが良い、食べる人にとって食べやすい硬さや大きさ)
・浄潔(清らかである、見た目が清潔でさっぱりしている)
・如法(仏の教えにかなっている、正しい順序・方法に従い丁寧に調理している)

*3) 六味について (上記にも記載あり)
・・・甘味、酸味、塩味、苦味、辛味の五味に淡味が加わった六つの味。
*化学的な味としての五つの基本味では甘味,酸味,鹹味(塩味),苦味に加えうま味が数えられますが、陰陽五行説にある五味ではうま味のかわりに辛味。そして六番目の味として数えられるのが淡みです。
*「淡味」は、精進料理に欠かすことのできないだしの味、つまり昆布や干し椎茸のうま味や風味、使用する素材そのものからの味わいを「淡味」と考えられています。

自然の恵みが自分の命をつないでもらうことに感謝し、いただく精進料理。

食事とは空腹を満たすものではなく、健康な生命を養う源として考えられています。
精進料理は、質素な栄養というイメージを持たれがちですが、栄養学的にはバランスの良い食事だと思います。

植物性のタンパク質やビタミン・ミネラルたっぷりのお野菜、キノコ類、根菜類など、旬な食材の素材そのものの味を頂けます。
旬の野菜は、旬でない時期に比べ、栄養価が高いですくなります。
また薄味ということもあり、高血圧予防にもつながりますし、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸を摂取しないこともあり、動脈硬化も予防できます。

忙しい毎日を過ごす中で難しいかもしれませんが、ゆっくりと時間がとれた時には、以下のようなことを頭におき、今一度食と向き合ってみてはいかがでしょうか。

・精進料理を食べる上では、自然や食材、食を通じて繋がる全ての人達への感謝の気持ちを持つこと。
・食事中は話さず、音を立てず、姿勢を正して、ゆっくりと五感で味わい、目の前の一皿と向き合うこと。
・食は体を保持するための良薬であり、汚れた心を清めるためのものであることを心に置くこと。

最近では一部のレストランや、お寺ツーリズムでも精進料理を体験できます。
ちょっとした気分展開や、自分の身体へのご褒美や良薬として、ぜひ愉しんでみてください。

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栄養士・食育指導士・食の6次産業化プロデューサーlevel4
石原綾子

ヘルスケア分野での栄養指導、アグリビジネスのプロフェッショナル。
ミスワールド日本候補生に向けた講演会など、美や健康に特化した分野をフィールドに様々な活動を行なっている。

「食を通して心と身体を豊かにし、人と地域がつながる生き生きとした社会を実現する」を理念に掲げ2013年に、株式会社アイ・フィールドを設立、代表を務める。
各地域で野外レストランを開催する「DINING OUT」の食材TEAMや、ファッションブランドのプロジェクトに中心メンバーとして参画。
また、地域食材のPR、「健康」や「美容」に特化した商品開発プロデュース、ブランディング、コンセプト設計、食品衛生、販売促進プロモーション、研修企画運営等に携わっている。GRØNの商品開発では栄養面での監修を担当。消費者の健康に、より効果的に取り入れる方法を提案している。

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